自動車用バッテリーの最適な補充電方法の考察

数年間使い込んだバッテリーを一般ユーザー向けとして売られているフツーの充電器で充電をすると、すぐに充電が終わってしまって拍子抜けする。一体この現象は何なんだと言うことでちょっと勉強した事をまとめたやつ。

一般向けバッテリー充電器の問題

市販の一般向け充電器の充電方式

一般向け充電器で主流である定電流-定電圧充電充電方式では、充電中期から終期にかけて電圧の制限にかかり充電電流が徐々に低下してゆく。設定で6A充電としても必ずしも6Aで充電されるとは限らないってこった。特に80%あたりまで充電されると急激に充電電流が下がり充電時間効率が著しく低下する。

バッテリーの内部抵抗が高い場合には充電設定電流と実際の充電電流との乖離が著しく大きくなり、充電初期から設定電流の1/10しか流れていなかったなんて事も多い。

定電流-定電圧充電のイメージ

原理上、充電電流が低下してからも充電を続ける事でそのうち満充電に達するが一般向けでは「どんだけ時間かかるんだこのポンコツ!」「いつまでも充電が終わらない!」などのクレームの元となったり安全上の問題があるので、満充電となる前に充電を止めてしまう。これが良くない。

具体的には充電プログラムによって色々なパターンがあるけど、良くあるのは規定の電圧に達したらタイマー発動して規定時間経過で充電終了的な単純なやつ。本当に充電されたかどうかは関係無く発動してしまう。

普通充電

液口栓付タイプのバッテリーの取扱説明書には、ほぼ例外なく普通充電時の充電電流と充電時間の記載があり、満充電するには放電量の1.2倍ほどを充電する事になっている。

※普通充電=定電流充電

出典 ユアサ

取説等に記載の充電時間は、充電開始時から終了まで常に一定の電流で充電する定電流充電を前提とした充電時間で、たとえば、容量60Ahで充電状態75%なバッテリーを満充電とするには6Aの電流で3時間=18Ahの充電が必要になるのだが・・・

実際に問題となったケース

64Ah充電状態60%ほどのバッテリーをどこにでも売っているDr.CHARGER DRC-600に繋ぎ「6Aで充電すると5時間ちょいだな」つって充電を始めても、たったの1時間チョイでけたたましい充電終了アラーム音が鳴り充電が終了してしまう。

この時、まだ充電の仕組み等をよく知らなかったので単純に「64Ahの40%を充電するから6Aに設定してだいたい5時間くらい経てば満充電となるはず」と考えていたが見込み違いだった。実際には定電流-定電圧充電の特性上、充電電流の低下があるので5時間程度じゃ全然足らず、たったの1時間チョイでは気休めにすらならない充電量で充電が止まっていた事になる。

本来であれば30Ah充電されないといけないのに、たった6Ahの充電で満充電と判定され充電が止まってしまうなんて一体どういうことだと憤慨し、一通り勉強することになる。

そんで、最後に取説を読んだら表紙に堂々と充電されませんっと書いてあったというw

ちゃんと書いてあった

上がったバッテリーをエンジンが掛かる程度にまで回復させるにはもちろん問題ないんだけど、僕らのような変人としては車イジリの一環として100%フル充電したいし、される物と信じて甲斐甲斐しく季節の変わり目なんかに補充電したりしていた。

いつでも最適なコンディション!!ってあんた箱に書いていたじゃないか

充電したつもりがされていない。これはある種の裏切りだと思うんですよ。

もろもろ学習して分かったことは、満充電にしたけりゃ充電終期まで継続的に16V以上を出せる充電器を使えって事です。こうして俺は安定化電源に手を出すことに・・・・

結論

一般向けの全自動充電器で主流である定電流-定電圧充電方式では手軽に充電出来るというメリットがある反面、安全寄り設計のせいで特に使い込んだバッテリーに対して追い込んだ充電がしにくいっていう事だった。

定電流充電最強、標準の充電方法として規定されている意味がちゃんとあった。

定電流充電とともにJIS D5301に規定されている16Vでの定電圧充電でも良い。

こだわる人にこそシンプルでハードボイルドな充電器が合っている。
バッテリーを車両から下ろせだとか、車両のマイナス端子は切り離せ壊れても知らんぞなどと、とにかく注意書きがうるさく、無骨な古くさいやつ。

昔ながらの重たい充電器にはトランスが使われ、準定電圧で充電される。

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準定電圧方式だけど安くてオススメな大自工業(メルテック)RCシリーズの箱書きには「トランスタイプだから出来るフル充電!」と、全自動タイプ(スイッチング方式が主流)の充電器との差別化を図る記載がされていて、わかっていらっしゃると感心したね。

自動車が趣味でもあったので、ついつい高くて高機能のものを買い求めたのが間違いのもとだったとは。能書きだけは立派な軟弱な充電器のなんと多い事よ。

様々な充電方式

鉛蓄電池の標準的な充電方式(JIS D5301 9.2 a)、普通充電

定電流充電のイメージ

電流を制限するが電圧は制限されない充電方式。※最大電圧は機器の能力や安全装置により実質的に制限される

バッテリーの取り扱い説明書には普通充電電流の記載があり、特別な場合を除いて5時間率容量の1/10の電流が指定される。(例:5時間率容量60Ahの場合は充電電流6A)
規定電流で充電中の端子間電圧または比重を15分毎に測定し3回連続で一定となれば満充電とする。

充電初期から終期まで一定の電流が流れるので時間効率が良く充電量の把握がしやすいが、バッテリーの状態によっては充電中の電圧が高くなり車両ECUの破損などの恐れがあるため車載状態での充電を避けるなどの注意が必要。

ガスの発生が多い≒液減りが多いので液補充不可のバッテリーには適さない。

定電流方式は抵抗などで簡易的に電流制限をするのでコストが安く安価な製品に採用される。
完全な定電流とはならないが、開放形バッテリーを充電するのに適している。

電圧を制限するが電流は制限されない充電方式。※最大電流は機器の能力や安全装置により実質的に制限される

定電圧充電のイメージ

14V~16V程度の定電圧で、電流制限は設けず成り行きに任せるためバッテリーの容量(大きさ)と充電電流を気にする必要がない。

自動車のオルタネーターによる発電・充電がこれにあたり充電電圧は14.4V前後に設定されている。

バッテリーの容量・状態により充電電流が変わるので充電量の把握がしにくく、充電が進むにつれ充電電流が小さくなっていくので時間効率が悪くなる。
内部がショートするなどした不良バッテリーを充電した際には意図せず大電流が流れ短時間で液が減ることがある。

定電圧方式はトランスの特性などを利用して簡易的に電圧制限をするのでコストが安く安価な充電器に採用される。
完全な定電圧とはならないが、開放形バッテリーを充電するのに適している。

鉛蓄電池の標準的な充電方式(JIS D5301 9.2 b)

定電流定電圧充電のイメージ

電流と電圧の両方を制限する方式。
一般向け充電器で多く採用される。

JIS D5301 9.2 bの規定では16V±0.05Vかつ20時間率電流の5倍の制限電流で24時間充電されるところ、一般向け充電器においては車載機器を損壊しないようにJIS D5301 9.2 bの規定よりも低い充電電圧となっている事が多い。

フロート充電のイメージ

フロート電圧(満充電時にバッテリー電圧と充電電圧が釣り合って充電電流がゼロとなる電圧、通常は13.6V前後)によって充電する定電圧充電の一種。
原理的に過充電とならないが、バッテリーの劣化度合い(内部抵抗)によってはいつまでも充電されない。
バイクや農機具などのオフシーズン時の維持充電、UPSなどの非常電源に使われる。

自己放電を補う程度の微少電流で充電される。定電流充電の一種だが、フロート電圧より僅かに高い充電電圧での定電圧充電とする充電器も多い。
用途はフロート充電とほぼ同じ。

おしまい

コメント

  1. […] しかし、自動車用バッテリーの最適な補充電方法の考察なんていう記事を書いてみたりしてるので、検証ついでに悪あがきしてみようと思い立ちまして。 […]

  2. […] 自動車用バッテリーの最適な補充電方法の考察でも長々としょうもない事を書いてるが、この試験の結果はオルターネーターの出力電圧(13.5~14.5V程度)では満充電になりにくい事を裏 […]

  3. […] こういうバッテリーは自動車用バッテリーの最適な補充電方法の考察で長々と書いたように市販の充電器では充電されにくい。 […]

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